QOL向上を目指して
リハビリには段階がある
高齢者に対して行うリハビリは疾患障害に対応するだけではなく高齢者の持つ特性を理解したうえで進めていく必要があります。心身の機能が最大限回復するように計画し、独立した生活を送れるようにサポートしていきます。高齢者のリハビリにはいくつか段階があります。まずは寝たきりの状態や要介護状態にならないように予防するためのリハビリ。そして疾病の治療と同時に始まる急性期リハビリ。次に急性期からの機能回復を目指す回復期リハビリ。最後が地域と連携して行う維持期リハビリです。
自立した生活を目指して
これまでの医療では延命のために行う臓器疾患の治療がメインであり、急性期疾患の治療や救命の分野で大きな力を発揮してきました。しかし、高齢者に対する医療という観点で考えると、尊厳を損なうような側面もあります。例えば高齢者医療において臓器別治療で疾患の治療だけに専念しても、関節の機能低下や筋力低下を招き高齢者の生活機能が低下してしまいます。すると、疾患は治ったものの自宅での生活が困難になってしまうというケースが考えられるのです。そのため、高齢者のQOLを意識した包括的な高齢者医療が重要であり、リハビリがより一層重視されるのです。
高齢者の特性
高齢者が抱える疾患というのは特定の箇所に限らず多臓器に渡る疾患が認められるケースが多いです。また、非定型的な症状があるうえに慢性化しやすく、機能障害や合併症につながりやすいという特徴があります。病気そのものだけではなく、生活環境の変化などによっても症状が変動するため、対応が困難になることも多いです。医療技術は日々進化しており、病気の早期発見や治療が可能となりました。しかし、すべての疾患を完璧に治療できるかと言えばそうではありません。慢性疾患を抱える高齢者に対しては、疾患と付き合いつつ自立した生活を維持することも必要なのです。
高齢者特有の疾患を対象とする
関節機能や筋力の低下、呼吸・循環系の機能低下、そのほかにも神経系や精神機能、代謝機能など多くの機能が老化によって変化していきます。そして、この老化による機能的変化が高齢者特有の疾病を発病させる原因となるのです。例えば、認知症、脳血管障害、パーキンソン病などの中枢神経障害。転倒による骨折、関節症、骨粗しょう症などの整形外科疾患。肺炎などの呼吸器疾患。糖尿病によって引き起こされる神経障害なども高齢者を対象としたリハビリ疾患として多いです。このように、高齢者リハビリでは特有の疾患を対象としています。